もっと速くなるためのトレーニング方法のヒントを国内外の本・雑誌・ブログ・論文などから(ほぼ)毎日紹介します。
◆グリコーゲン・ローディングが成功したかをチェックする方法 2011.11.04
参考文献:八田秀雄著・『乳酸と運動生理・生化学』・P39, P54・市村出版
農畜産業振興機構:
http://sugar.alic.go.jp/japan/view/jv_0106b.htm
スポーツ医科学レポート:
http://www.gifuspo.or.jp/kobetu/taikyou/taikyo_ronbun/8/1.htm
グリコーゲン・ローディング(カーボ・ローディング)は、1時間半〜2時間を超える強度の高い運動で有効といわれている体内のエネルギー貯蔵量を増やす方法のこと(関連記事→
新しいグリコーゲン・ローディング)。グリコーゲン・ローディングをレース前に試したものの「うまくいったかどうかイマイチわからなかった」という経験はないだろうか?実際に体内のグリコーゲン量をチェックしようにも市販の機器はないが、1つだけ簡単に無料でできるチェック方法がある。それは体重をチェックすることだ。
体内に貯蔵されるグリコーゲンが1g(4.1kcal)増える時は水3gと結合する。つまりグリコーゲン・ローディングに成功した場合は、必ず貯蔵量の増加分とその3倍の水の重量分だけ体重が増える。
新しいグリコーゲン・ローディング法を使った場合、食事量はあまり変えずに食事の量の構成だけ変える(炭水化物の比率を上げる)ので、お腹に入ったものの重さで体重が極端に増減することはない。レース前日に、極端な暴飲暴食をせずにいつも通りの食事量をとっていたのに、レース当日に体重が4〜5日前よりも増えていた場合は、グリコーゲンローディングに首尾よく成功した可能性が高い。実際にどの程度体重が増加するかはは個人差が大きいが、平常時の体重よりも1.2〜1.6s程度増加していれば、まず成功したと判断できる。また筋肉がいつもよりも水を含んで膨らんで張りがある感じになっている場合も成功したサインといえる。
逆に返せば、グリコーゲン・ローディングに成功することは体重増加を意味するので、重量が不利に働くヒルクライムやスタート直後に上りがあるコースのロードレースの場合は、むしろ回避した方がよい。
特にヒルクライムは、1時間半〜2時間程度でゴールできるようなコースがほとんどなので、普段の貯蔵量で十分足りる。また筋グリコーゲンは、FTPを超える強度で急速に消費量が増加するが、ヒルクライムではFTPちょうどあたりでをずっと一定のペースを維持することが重要なので、その点でも筋グリコーゲンをわざわざ増やす必要性はそれほど大きくはない。苦心してダイエットをし、多額の費用をかけて機材の軽量化をしたにも関わらず、あまりパフォーマンスに関係しないグリコーゲン・ローディングをしたことで体重が増加しそれらが帳消しになってはもったいないので、あまりおすすめできない。
こういったことから、グリコーゲン・ローディングが適しているのは、重量が不利にならない長時間のレースや加速や減速が頻繁にあり筋グリコーゲンの貯蔵量が勝負の分かれ目になるレースといえる。例えば、ツール・ド・おきなわ市民210qのように、前半70qが平坦で後半に山岳が控えてる場合などは、比較的有効だと考えられる。
ただしグリコーゲン・ローディングがうまくいくかやその効果については、個人差が大きい。また「体重増加」以外にも、
1.体質に合わず体調を崩す場合がある
2.タンパク質や脂肪酸が不足し、めまいや筋肉痛の度合がひどくなる
といった「マイナスの結果につながることがある」「必ずしも実際のパフォーマンスの改善につながらない」という選手・研究者・スポーツコーチの報告や意見もあるので注意が必要だ。
もし重要なレースでグリコーゲン・ローディングを行いたいと思っているのであれば、ぶっつけ本番で試すのではなく、その前に一度練習や重要でないレースで試して「自分に適しているかどうか」を事前にチェックしておいた方がよい。
【参考数値】
<成人男性の一般的な値>
筋グリコーゲン:365.9g(1,500kcal)…運動のエネルギー源となる
肝臓のグリコーゲン:100g(410kcal)…血糖値を調整する役割
血中グルコース:20g(82kcal)…脳や筋肉に運ばれエネルギー源となる
グリコーゲンの体内貯蔵量合計:約500g(約2,000kcal)…トップレベルで最大750g(3,075kcal)程度
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<本件記事の参考文献>
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