もっと速くなるためのトレーニング方法のヒントを国内外の本・雑誌・ブログ・論文などから紹介します。
◆競輪学校で用いられている「キャパシティーとパワーのトレーニング理論」 2012.04.10
参考文献:田畑昭秀主任・『競輪学校のキャパシティー&パワートレーニング』
『コーチング・クリニック2007年11月号』・P20~23・ベースボール・マガジン社
参考URL:CS-net・『自転車トレーニングの理論』
http://www.cycle-sports.net/progress/training/training/theory/index.html
ロード・レースの基礎は有酸素能力だが、レース中には繰り返し高強度のインターバルがかかるので、レース期には無酸素能性能力を高めレース強度に耐えられるように身体を仕上げる必要がある。この無酸素性能力がひじょうに高いと思われるのが競輪選手だが、いったいどのような理論にもとづいて練習をしているのだろうか。今回は『コーチング・クリニック2007年11月号』やCS-netを参考に、日本競輪学校で採用されている「キャパシティーとパワーのトレーニング理論」を紹介する。
このトレーニングをかんたんに要約すると、「最初にキャパシティートレーニングにより体内に貯えられるエネルギー容量を増やし、次にパワートレーニングで一度に放出できるエネルギー量を高める」ものといえる。
これは旧東ドイツで考案されオーストラリアで改良を加えられたもので、日本ではアテネ・オリンピックの頃から取り入れられた。競輪学校には2002年から導入され、競輪選手の卵を対象に「競輪の勝負を分ける無酸素性能力」を高めるために、キャパシティートレーニングとパワートレーニングを行っているという。
■キャパシティートレーニングとは
キャパシティーとは人間の身体に貯えられるエネルギー容量のことを指す。「キャパシティーが大きい」とは、「身体の中にたくさんのエネルギーを貯えておける」という意味であり、エネルギーの貯蔵量が多ければそのエネルギーを使ってダッシュを繰り返す能力が高くなると考えられる。キャパシティートレーニングとは、このエネルギー容量を高めるためのトレーニングといえる。
それではキャパシティーを増やすにはどのようにしたらよいのだろうか。CS-net・『自転車トレーニングの理論』では、以下の3つのアプローチが示されている。
①筋肥大により筋肉量を増やす
②エネルギー源やエネルギー産生を増やす*
③回復能力や持久力を高める**
*具体的には、筋グリコーゲン量・クレアチン量・ミオグロビン量・ミトコンドリアなどを増やす
**具体的には、筋の酸化能力、毛細血管密度、乳酸耐性、有酸素能力などを向上させる
参考情報→
トレーニング・ゾーン別練習効果の一覧表
■パワートレーニングとは
体内にエネルギーを大量に貯えられたとしても、それを素早く放出できなければ大きなパワーを出せない。パワートレーニングとは、貯えられた燃料をすばやくエネルギーに変換し、そのエネルギーを効率的に使えるようにするためのトレーニングといえる。これにより筋力・筋パワーの向上が期待できる。
それではパワーを高めるにはどのようにしたらよいのだろうか。CS-net・『自転車トレーニングの理論』では、以下の2つのアプローチが示されている
①筋出力を高める***
②エネルギー出力を高める****
***具合的には、動員される運動単位の増加、共同筋・拮抗筋の作用等の神経筋協調能を改善させる
****具体的には、エネルギーの変換効率を高め、各種酵素活性を高める
競輪学校では、トレーニングをキャパシティーとパワーの2つの期間に分け、最初にキャパシティートレーニングを6~8週間行い、次にパワートレーニングを4~6週間行う。この2つの期間を組合せて1トレーニングサイクルとして、このサイクルを1年間に数回繰り返す。このような期分けを行うのは、キャパシティートレーニングとパワートレーニングでは、練習目的やトレーニング方法がかなり違うからだ。それぞれのトレーニング刺激に対して身体が適応するまで十分な時間をかけて継続的に練習することで、トレーニング効果が高まると考えられる。
具体的なトレーニング・メニューやトレーニング計画については、『
COACHING CLINIC (コーチング・クリニック) 2007年 11月号 [雑誌]』 や
CS-netで紹介されているので、「無酸素性能力を高めたい」「競輪学校での練習に興味がある」と思っている方にはきっと参考になるだろう。
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<本件記事の参考文献>
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