もっと速くなるためのトレーニング方法のヒントを国内外の本・雑誌・ブログ・論文などから(ほぼ)毎日紹介します。
◆集団の中の「スイート・スポット」 2012.03.20
参考文献:Chris Carmichael AND Jim Rutberg共著・『The Time-Crunched Cyclist』・ P147~P148・Velopress
ハンター・アレン アンドリュー・コーガン博士共著・『パワー トレーニング バイブル』・P136
OVERLANDER株式会社
レースでは、ここぞという時にパワーを十分に出せるようにするために無駄なパワー・ロスを極力少なくするほうが望ましいといえる。具体的には、なるべく急加速のようなFTPを大幅に超えて筋グリコーゲンを大量に使うような動きを少なくすることや、そもそもペダルを踏んでいる時間をなるべく少なくすることが大切になる。しかしそれをどのように実現したらよいのだろうか。今回は、集団走行時になるべく「パワー・ロスを少なくするための位置取り」について『The
Time-Crunched Cyclist』を参考に紹介する。
ひとことで集団走行といっても、前方に位置取りするのと後方に位置取りするのとでは、体にかかる負荷がかなり違う。
一般的には、集団走行時は前にいくほどペースが一定で、後ろに下がれば下がるほどペースの変動幅が大きくなる。特に道幅の狭いコースでのクリテリウムでは、その変動幅はかなり大きくなる。例えば、先頭がコーナーで軽くブレーキをかけただけでも、集団後方のライダーはハード・ブレーキが必要になり先頭との距離が大きく開いてしまう。そこで、コーナーをクリアするたびにその差を詰めるために急加速が必要になり、結果的に筋グリコーゲンをどんどん消費してしまう。
これを回避するには、なるべく集団の先頭に位置取りしたほうがよいが、あまりにも前過ぎると先頭交代のローテーションに加わる必要が出てくるので、必ずしもベストとはいえない。集団の中の「スイート・スポット」と呼ばれているのは、「10~25番目」の集団の中心部に近い位置だ。この辺りに位置取りしておけば、急加速を伴うペース・アップやアタックなどにも対応できるうえに、先頭に近いので比較的ペースが一定で、また空気抵抗によるパワー・ロスも最小限にとどめることができる(よって筋グリコーゲンの消費を少なくすることができる)。
『パワー・トレーニング・バイブル』のP136には「最強のロードレーサーは, レース時間全体の少なくとも15%はペダルを踏んでいません。もしあなたが全レース時間の85%以上ペダルを踏んでいたようであれば,
集団での位置取りを考え直したほうがよいでしょう。」との一節がある。
Cadence Distribution(ケイデンス分布図)を表示できるパワー・データ分析ソフトであれば、レースでペダルを踏んでいなかった割合をかんたんに確認することができる。いちど気になるレースのパワー・データのケイデンス分布図をチェックしてみれば、何か新たな発見があるかも知れない。
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<本件記事の参考文献>
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