もっと速くなるためのトレーニング方法のヒントを国内外の本・雑誌・ブログ・論文などから(ほぼ)毎日紹介します。
◆睡眠時間を長くするとパフォーマンスが伸びたという研究事例 2012.02.08
参考文献:内田直教授・『アスリートの「睡眠」と「生体リズム管理」』
『コーチング・クリニック2010年10月号』P78~82・ベースボール・マガジン社
Robert Panzera著・『Cycling FAST』・P180・Human Kinetics社
Lea Dabison(現在Specialized所属のプロXC-MTB選手)談
ロード・レースの練習は回復との戦いともいえる。体が強くなるのに必要な負荷をかけたあとに、どれだけ速く回復させられるかが次の練習の質や量にも影響してくるからだ。速く回復させることができれば、その分だけ練習の質を上げたり練習量を増やすことができるだろう。回復にひじょうに重要な役割を果たすのが「睡眠」だ。今回は『コーチング・クリニック2010年10月号』や『Cycling
FAST』を参考に、「長時間の睡眠」がパフォーマンスに与える影響について紹介する。
『コーチング・クリニック2010年10月号』において内田直教授(早稲田大学)は、スタンフォード大学のシェリー・マー博士が行った興味深い実験を紹介している。
この実験は「睡眠時間を通常よりも延長することがスポーツのパフォーマンスにどう影響するか」を調査することを目的としたものだ。
実験に参加したのはスタンフォード大学の水泳部5名で、実験期間中の数週間にわたって毎日睡眠を10時間取らせた。この結果、実験期間中に3名が自己ベストを更新した(5名中1名は途中でドロップアウト)。また競技成績とは直接関係ないが、単純反応課題に対する反応時間が短縮し、気分が改善しやる気が出たとの結果が得られたという。同じような実験をテニス選手で行ったところ、短距離ダッシュの成績が向上し、ショットの正確性が改善する結果となった。
これらの実験結果を見る限り「睡眠時間を通常よりも延長することはスポーツパフォーマンスの向上に役立つ可能性が高い」といえそうだ。
また内田直教授らの調査では、短距離の陸上選手と長距離の陸上選手とでは、長距離選手のほうが睡眠時間を長くとっているという結果が出ている。またトレーニング強度がひじょうに高い合宿中は通常の睡眠時間にくらべて長くなるとの調査結果もあることから、「消費エネルギーが多いほど長い睡眠時間が必要になる」可能性がある。
ロード・レースの練習は長時間でかつエネルギー消費量がかなり多い運動なので、回復にはより長い睡眠時間が必要となる可能性が高いだろう。実際に『Cycling
FAST』の中でSpecialized所属のプロXC-MTB選手であるLea Dabison選手も「毎日必ず9~10時間の睡眠を取る」と述べている。
夜の時間にテレビを見るかゲームなどをして過ごしている時間があるのであれば、その時間を削って睡眠時間を多くとるだけで競技力をより伸ばせる可能性があることを、この研究は示唆している。
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<本件記事の参考文献>
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