もっと速くなるためのトレーニング方法のヒントを国内外の本・雑誌・ブログ・論文などから(ほぼ)毎日紹介します。
◆持久力を最大限高めるには少なくとも数年は練習を継続する必要がある(アームストロングのLTパワーなど身体能力の推移データ) 2011.12.23
参考文献:Jesper Bondo Medhus, MD・『
Time Effective Cycling Training』・P26~27
Adviser今中大介・『今中大介のロードバイクテクニック』・P84・枻出版社
ランス・アームストロング, クリス・カーマイケル共著・本庄俊和訳
『ミラクルトレーニング 7週間完璧プログラム』・P151・未知谷
参考URL:ウィキペディア→
リンク(日本語) リンク(英語)
THE ORCA PRESENTS A DAY WITH CHRIS CARMICHAEL
http://www.jt10000.com/team/events/carmichael99/1.htm
ロード・レースで速く走れるようになるには持久力の底上げが必要だが、自分のポテンシャの限界まで達するまでには少なくとも数年、普通は競技を始めてから10年程度はかかる。近年はパワー・メーターの普及によって運動負荷が正確に管理できるようになったので、「短時間・高強度」で効率的に速くなるためのトレーニング方法普及してきたが、これには落とし穴もあるので注意が必要だ。
それは「短時間」というのは「1日や1回の練習時間」のことをいっているのであって、本当に持久力を最大限まで高めるには、やはり少なくとも数年はかかるのが普通である点だ。また「成功率」という問題もある。
まず「持久力が年単位で改善すること」の好例として、ランス・アームストロングの身体能力の推移をみてみたい。
アームストロングのような練習量・質ともに世界最高水準であったと思われる選手でさえ、以下のデータのようにLTパワーは年単位でゆっくりと向上している。
【ランス・アームストロングの身体能力の推移】
年齢 LTパワー 体重 W/kg VO2max 出来事
(歳) (W) (kg) (ml/kg/分)
1993年 21歳 342 75* 4.6** 78.9 ツールステージ優勝1回・世界選手権優勝
1994年 22歳 364 75* 4.9** 74.2
1995年 23歳 381 75* 5.1** 73.8 ツール総合36位(ステージ優勝1回)
1996年 24歳 403 75* 5.4** 72.2 癌が判明・治療へ
1997年 25歳 263 75* 3.5** 64.1
1999年 26歳 416 72 5.8 77.1 ツール初制覇(ステージ4勝)
2004年 31歳 493 74 6.7 83.8*** ツール6連覇(ステージ5勝)
*1997年以前の体重は不明に付『今中大介のロードバイクテクニック』の値(ツール初制覇前の数値)を仮置き
**推定値
***最大値(2004年時点ではない可能性あり)
つまりLTパワーに代表される持久力の底上げで何より大切なのは、長期間にわたって十分な負荷をかけて「練習を継続すること」だといえる。
ここで問題になるのが「練習強度」と長期間練習を継続できるかどうかの「成功率」の関係だ。
「短時間・高強度」トレーニングは時間効率はよいものの「成功率」は低い。「VO2maxインターバルはVO2maxパワーとLTパワーの両方を同時にもっとも効果的に上げることができる」という説があるが、「かなりきつい」練習なだけにこれだけを長期間にわたって継続することは心理的にも肉体的にもかなり難しいと思われる。
逆に「低強度・長時間」トレーニングの代表格であるLSDは、ひじょうに時間効率は悪いものの「きつくない」運動なだけにトレーニングを継続できるかどうかの「成功率」はかなり高い。つまりプロを代表とする膨大な時間を練習につぎこめる選手であれば、LSDをみっちりやることで自転車選手として大事な持久力の基礎を確実に(高い成功率で)作り上げることができる。
一般のロード・レーサーにとって「時間効率」と「成功率」のバランスがよいのが「メディオ(LT~SST:スウィートスポットトレーニング)」だろう。このレベルは「きつい」ものの連日・長期間継続できるレベルであり、ある程度のレベルの選手であれば成功率が高い(初心者にはきつすぎる可能性があるので、初心者はLSDから始めた方が無難)。アマチュアの強豪選手の多くが、平日はローラー練で「メディオ」を中心にトレーニングしているのは、この練習強度が「練習効果」「練習時間」「成功率」のバランスがいちばんよく、長い目で見ると結果的にベストの練習効率であることが経験からわかっているからだろう。
ロード・バイクの練習方法にはさまざまなアプローチがあるが、「数年単位で練習を継続すること」を前提にトレーニングの「強度」「時間」「成功率」のバランスをうまく取ることが、自分の能力を最大限開花させるうえで大切といえる。
関連情報→
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<本件記事の参考文献>
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